農地転用の費用と期間|宅地にできない土地の見分け方
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📑 目次
※本記事はプロモーションを含みます。
農地転用の費用は、行政書士に頼む場合で5万〜15万円が中心帯(5条の全国平均12万186円)。
申請手数料は原則なく、地目変更登記の登録免許税もゼロだ。
期間は標準処理期間42日(宇都宮市)〜70日(北海道)に月1回の締切待ちが乗り、2〜3か月を見ておく。
ただし青地・甲種農地・第1種農地は原則不許可で、ここに当たった土地はいくら払っても宅地にならない。
「転用できると思って買った」は、順番を間違えている。まず土地の区分を確かめてほしい。
先に結論。農地転用の5原則
① 転用=農地を農地以外のものにすること。自分の農地を自分で転用するなら農地法4条、転用目的で売買・貸借するなら5条(売主と買主の連署)。宅地・駐車場・資材置場・植林、どれも転用だ。
② 許可権者は都道府県知事(指定市町村の長)。農業委員会は原則として経由窓口だが、権限移譲を受けた市町村では農業委員会自身が許可権者になる(宇都宮市など)。自分の市町村がどちらかは窓口で確認を。例外は市街化区域で、ここだけはあらかじめ農業委員会に届け出れば許可不要(4条1項7号・5条1項6号)。
③ 費用の主役は「人に頼む金」と「土を直す金」。申請手数料は原則なし、地目変更登記の登録免許税もゼロ。かかるのは行政書士報酬(5条の全国平均12万186円・最頻値10万円)と、整地・土盛りなどの造成費だ。
④ 期間は「標準処理期間+締切待ち」で読む。宇都宮市は受付締切日から許可書交付まで42日、北海道知事許可は70日。そこに月1回の申請締切が前に乗るので、実感としては2〜3か月を見ておく。
⑤ 転用できない土地がある。農用地区域内農地(青地)・甲種農地・第1種農地は原則不許可。しかも登記簿の地目を見ても分からない。判定は市町村の農振担当課と農業委員会にしかできない。
⚠️ 本記事は2026年9月11日時点で公開されている法令・公的資料をもとにした一般的な整理です。農地転用の許可基準、申請の締切、標準処理期間、造成費の水準は市町村ごと・都道府県ごとに異なります。実際の可否と金額は、必ず転用したい農地がある市町村の農業委員会と、農業振興地域を担当する部署でご確認ください。
この記事でわかること
- 4条と5条、許可と届出の分かれ目
- 農地区分5種類と、転用できない土地の見分け方
- 費用の内訳と期間、許可が下りない4つの型
農地転用とは——「土地の身分」を変える手続き
北海道の農地調整課はこう定義している。
人為的に農地(採草放牧地)を農地(採草放牧地)以外のものにすることを農地転用といいます。
宅地も、駐車場も、資材置場も、植林も、全部「転用」だ。建物を建てなくても転用になる。
北海道は「砂利採取やイベント会場などで農地を一時的に使用する場合にも、許可が必要となります」と明記している(区画や形質を変えず、1〜2日程度のごく短期間で、終了後すぐ耕作可能な状態に戻ることが明らかな場合は、転用に当たらない取扱いをすることがある)。
無許可でやった場合について、北海道の説明は簡潔だ。
許可を受けなかったり、届出せずに農地を転用すると、売買などの法律行為が無効になり、所有権移転の登記もできません。また、罰せられることがあります。
罰則は農地法第64条の3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。
法人は第67条第1号により1億円以下の罰金だ。
第51条で、都道府県知事等は工事の停止命令や原状回復命令を出せる。
従わなければ土地の地番を公表でき、行政が自ら原状回復して費用を違反者に負担させることもできる(同条3項〜6項)。
逆に「許可が要らない転用」もある。
宇都宮市の案内によれば、耕作者が自ら耕作している農地に農業用施設(農業用倉庫等)を設置する場合で、2アール未満のものは転用許可が不要だ(農業用施設用地とするための願出は必要)。
4条と5条——申請するのが誰か、で分かれる
分岐は土地の持ち主が変わるかどうか、それだけである。
| 農地法4条 | 農地法5条 | |
|---|---|---|
| 場面 | 自分の農地を、自分で転用する | 転用目的で買う・借りる(権利の設定・移転を伴う) |
| 申請者 | 農地の所有者(=転用する本人) | 譲渡人と譲受人が連署で申請 |
| 典型例 | 自分の畑に自宅を建てる/駐車場にする | 畑を買って家を建てる/貸して資材置場にする |
| 許可権者 | 都道府県知事等 | 都道府県知事等 |
| 市街化区域 | 農業委員会へ届出 | 農業委員会へ届出 |
移住者や事業者が関わるのは、ほぼ5条だ。
農林水産省の集計でも、令和5年の農地転用は4条が2万1,480件(1,303ha)に対し、5条は9万5,884件(8,512ha)。件数の約8割、面積の約87%が5条である。
5条は「転用」と「売買(貸借)」を1本の許可で処理する制度だ。
農地を普通に買うときの農地法3条の許可とは別物で、審査するのも農業委員会ではなく都道府県知事等になる。「農地として買う」と「転用目的で買う」は、入口から別の窓口だ。
許可か届出か——市街化区域だけが、別の世界
農地法4条1項7号と5条1項6号に、はっきりした例外がある。
市街化区域内にある農地を、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地以外のものにする場合
市街化区域は、都市計画法で「すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とされたエリアだ。
だから農地であっても許可制ではなく届出制になる。
添付書類も軽い。
農林水産省「農地転用の手続」によれば、許可申請には資力・信用を証する書面や施設の配置図など7種類の書類が要るのに対し、市街化区域の届出は、土地の位置を示す地図と登記事項証明書(全部事項証明書)、それに賃借権があればその解約の許可等を証する書面で足りる。
宇都宮市は「市街化区域の届出は、随時受付しています」としている。
令和5年の実績では、許可による転用が6万3,581件(6,650ha)、市街化区域の届出による転用が5万3,783件(3,164ha)。
件数では4割以上が届出で済んでいる。
ただし市街化区域の農地は宅地並みに評価され、値段も税金も高い。
「安い畑を買って家を建てる」目的とは両立しにくい。
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農振・青地・甲種・立地基準・一般基準——農業委員会の窓口では、この手の単語が前置きなしで飛んでくる。制度そのものはネットの解説記事より条文と自治体の告知のほうが正確なのだが、いきなり読むと骨が折れる。実務書を1冊手元に置いて用語を押さえておくと、相談の密度がまるで変わる。
農地区分5種類——ここで結果の8割が決まる
農林水産省の「農地転用許可制度の概要」は、制度の狙いをこう説明している。
優良農地を確保するため、農地の優良性や周辺の土地利用状況等により農地を区分し、転用を農業上の利用に支障が少ない農地に誘導するとともに、具体的な転用目的を有しない投機目的、資産保有目的での農地の取得は認めないこととしている。
これが立地基準だ。
区分は5つ。
上から順に固く、下にいくほど緩い。
| 農地区分 | どんな農地か | 許可の方針 |
|---|---|---|
| 農用地区域内農地(青地) | 市町村の農業振興地域整備計画で農用地区域とされた区域内の農地 | 原則不許可(農用地利用計画で指定された用途=農業用施設、農産物加工・販売施設等の場合に例外許可) |
| 甲種農地 | 市街化調整区域内で、農業公共投資後8年以内の農地/集団農地で高性能農業機械での営農が可能な農地 | 原則不許可(土地収用事業の認定を受けた施設、農業用施設、集落接続の住宅等は500㎡以内まで等の例外) |
| 第1種農地 | 10ha以上の集団農地/農業公共投資の対象農地/生産力の高い農地 | 原則不許可(土地収用法対象事業、農業用施設、集落接続の住宅等の例外) |
| 第2種農地 | 農業公共投資の対象になっていない小集団の生産力の低い農地/市街地として発展する可能性のある区域内の農地(群馬県は「鉄道の駅が500m以内にある等」と例示) | 第3種農地に立地困難な場合等に許可 |
| 第3種農地 | 都市的整備がされた区域内の農地/市街地にある区域内の農地(群馬県は「鉄道の駅が300m以内にある等」と例示) | 原則許可 |
上3つに当たったら、家は建たないと思ったほうがいい。例外の「集落接続の住宅等」は、既存の集落に接している土地に、ほかに適地がない場合に限って認められるもので、甲種農地では500㎡以内という上限まで付く。
第2種は「もっと市街地寄りの土地では代替できない」ことを示す必要があるが、第3種は原則許可だ。
費用——申請そのものより、「人」と「土」に金がかかる
① 許可申請の手数料
農林水産省の「農地転用の手続」には添付書類が7種類まで細かく書かれているが、手数料の定めは出てこない。
宇都宮市・群馬県・北海道の案内にも記載はない。
「金額表が存在しない」ことを根拠にした整理なので、念のため申請先の農業委員会で確認してほしい。
実費としてかかるのは、登記事項証明書・公図・住民票などの交付手数料と、図面の作成費だ。
② 行政書士に頼む場合の報酬
日本行政書士会連合会は行政書士法第10条の2第2項に基づいて5年に1度、全国的な報酬額統計調査を実施している。最新は令和7年度(令和8年1月実施)だ。
| 業務 | 回答者数 | 平均 | 最頻値 | 最小値 | 最大値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 農地法4条許可申請 | 273人 | 9万6,893円 | 8万円 | 8,800円 | 80万円 |
| 農地法5条許可申請 | 501人 | 12万186円 | 10万円 | 5,000円 | 161万8,720円 |
| (参考)農地法3条許可申請 | 493人 | 5万8,616円 | 5万円 | 5,000円 | 50万円 |
| (参考)農地法3条の3の届出 | 174人 | 2万3,502円 | 1万1,000円 | 1,000円 | 50万円 |
5条許可申請の回答501人のうち、5万円以上10万円未満が42.1%、10万円以上15万円未満が29.1%。
この2区分で7割を占める。
平均を12万円まで押し上げているのは、最大値161万8,720円のような案件だ。
この調査の金額には消費税が含まれ、立替金(登記事項証明書代など)は含まれない。
③ 地目変更登記
許可が下りて工事が終わったら、登記簿の地目を「畑」から「宅地」に変える。
熊本地方法務局は、地目変更登記についてこう書いている。
地目変更登記は,登録免許税がかかりません(無料)。 申請されてから登記が完了するまで,1週間から2週間程度のお時間をいただきます。
税金はゼロ、期間は1〜2週間だ。同局は「登記の申請は,ご本人様で行う方法と土地家屋調査士に依頼する方法があります」とも書いている。法務局は畑から宅地に変更した場合の記載例を公開していて、添付情報は許可書(場合により農業委員会の現況証明書や都市計画法の許可書)だ。
ただし、これは義務でもある。
不動産登記法第37条第1項は、地目に変更があったときはその変更があった日から一月以内に変更の登記を申請しなければならないと定める。
正当な理由なく怠ると同法第164条第1項により10万円以下の過料だ。
土地家屋調査士の報酬は事務所ごとの設定なので、見積もりを取ってほしい。
④ 造成費
実際の金額は土地の高低差と地盤次第で、全国相場は存在しない。
そこで、国が「評価」に使っている単価を目安に置く。
国税庁は市街地農地などを相続税・贈与税で評価するとき、宅地並みの価額から差し引く造成費に都道府県ごとの金額表を定めている。
令和8年分・栃木県の平坦地の表はこうだ。
| 工事費目 | 単価(令和8年分・栃木県) |
|---|---|
| 整地費 | 1㎡当たり800円 |
| 伐採・抜根費 | 1㎡当たり1,100円 |
| 地盤改良費 | 1㎡当たり2,300円 |
| 土盛費 | 1㎥当たり8,100円 |
| 土止費(擁壁) | 擁壁1㎡当たり9万600円 |
これは工事の見積もりではなく、財産評価のための基準額だ。重いのは土止費(擁壁)の9万600円/㎡。道路より低い田を埋め立てて宅地にする場合、土砂の流出を防ぐ擁壁が要る。
100坪(約330㎡)で組んでみる
| 項目 | 自分でやる場合 | 行政書士に頼む場合 |
|---|---|---|
| 転用許可申請の手数料 | 原則なし | 原則なし |
| 添付書類の実費(登記事項証明書・公図等) | 数千円程度 | 実費は別途請求が通例 |
| 行政書士報酬(5条) | 0円 | 5万〜15万円が約7割(最頻値10万円) |
| 地目変更登記の登録免許税 | 0円 | 0円 |
| 地目変更登記の代行 | 0円(自分で申請可) | 土地家屋調査士に依頼するなら別途 |
| 整地費の目安(330㎡×800円) | 約26万円 | 約26万円 |
| 土盛り・擁壁が必要な場合 | 桁が変わる(擁壁は1㎡当たり9万円台) | 同左 |
同じ「100坪の農地」でも、平坦な畑と道路より低い田では費用が大きく違う。値札より先に、高低差と地盤を見る。
期間——標準処理期間に、締切待ちを足す
農地転用は、月1回の申請締切に合わせて動く。
自治体が公表している数字を2つ並べる。
- 宇都宮市(農地転用許可の指定市町村)……市街化区域以外の許可申請の締切は毎月月末(閉庁日ならその前の開庁日)。「申請書の受付締切日から許可書の交付までの事務の標準処理期間を42日と定め」ている。市街化区域の届出は随時受付。
- 北海道(知事許可)……「知事許可の場合、申請してから許可を受けるまでの標準的な期間は70日(そのうち受付窓口の農業委員会の経由期間は60日)」。
起算点が違う(宇都宮市は締切日から、北海道は申請から)ので単純比較はできない。
宇都宮市は平成30年10月1日から農地転用許可の指定市町村になっていて、市内で完結する。
平成28年4月の制度見直しで、4ha超の許可権限も国との協議を付したうえで都道府県・指定市町村に移り、2〜4haの国協議は廃止された。
| 段階 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 0 | 農業委員会・農政担当課へ事前相談 | 土地を決める前に |
| 0’ | 青地なら農振除外、地域計画区域内なら地域計画の変更 | ここで半年〜が乗る |
| 1 | 申請書+添付書類7種を作成 | 資金計画・図面・同意書 |
| 2 | 農業委員会へ提出(月次の締切) | 宇都宮市は毎月月末 |
| 3 | 現地調査・農業委員会の総会で議決、意見を付して送付 | 30a超なら都道府県農業委員会ネットワーク機構の意見聴取が入る |
| 4 | 都道府県知事等が許可(4ha超は農林水産大臣に協議) | — |
| 5 | 許可書の交付 | 宇都宮市42日/北海道70日 |
| 6 | 工事 → 地目変更登記(変更の日から1か月以内) | 登記完了まで1〜2週間 |
着工したい時期から逆算して、早めに窓口へ相談しておきたい。
転用できない土地の見分け方
費用も期間も、この判定が通った先の話である。
登記簿では分からない。見るべきは「農振」
農業振興地域の整備に関する法律(農振法)に基づいて、都道府県が農業振興地域を指定し、市町村がその中で農用地区域を定める。
この農用地区域内の農地が、通称「青地」だ。
青地は農地法5条2項1号イで不許可と定められている。
先に農振除外で青地を外し、そのうえで転用許可を取る二段構えになる(農地転用許可を得た土地には、農振法第15条の2の開発許可は不要=同条1項ただし書3号)。
登記事項証明書にも、公図にも、「青地」とは書いていない。確定させるには次の3か所を回る。
- 市町村の農業振興地域を担当する課(農政課・農政企画課など)……青地かどうかの判定
- 市町村の農業委員会……農地区分(甲種・第1種・第2種・第3種)と転用の見込み
- 都市計画担当課……市街化区域か市街化調整区域か、区域区分そのものがあるか
一次確認は農林水産省のeMAFF農地ナビの「農振法区分」でできる(農用地区域かどうかが1筆ごとに表示される)。
ただし農地台帳に未記載だと「設定なし」と出るし、台帳と現況がずれることもある。最終判定は必ず市町村の農振担当課で取る。
青地を外す「農振除外」は、年に何回も入口が開かない
青地から外す手続きが農振除外(農用地区域からの除外)だ。
農振法第13条第2項が定める要件をすべて満たす場合に限ってできる。
- 農用地区域以外の土地利用の状況からみて、その土地を農地以外に使うことが必要かつ適当で、ほかの土地で代えることが困難であること
- 地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないこと
- 農用地の集団化・農作業の効率化など、土地の農業上の効率的・総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと
- 効率的かつ安定的な農業経営を営む者への農用地の利用集積に支障を及ぼすおそれがないこと
- 農業用用排水施設などの機能に支障を及ぼすおそれがないこと
- 一定の土地については、土地改良事業完了後8年を経過していること
とりわけ1つ目が重い。白地(農用地区域外)に適地があれば、そちらへ行きなさいという話になる。
時間もかかる。
愛知県豊田市では、農振除外の申出受付は2月・5月・8月・11月の月初め3日間(土日祝を除く)に限られ、「農振除外の受付から計画変更まで約6か月かかります」と明記されている。
申出がすべて認められるわけではない、とも書かれている。
さらに地域計画に載っている農地は、転用申請の前に地域計画からの除外が必要になった。
宇都宮市は「令和7年4月1日以降において、申請地が『地域計画区域内』の場合は、農地転用許可申請の前に、地域計画の変更手続き(対象農地を地域計画から除外)が必要となります」と告知している。
豊田市も、農振除外の申出と同時に地域計画変更申出書を出すよう求めている。
許可が下りない4つの型(一般基準)
区分をクリアしても、一般基準の関門がある。
農地法5条2項3号・4号と農林水産省の制度概要から整理すると、落ちる型は4つだ。
① 転用の確実性が認められない 他の法令の許認可の見込みがない、関係権利者の同意がない、といったケース。農地法だけ見ていても通らない。
② 資金計画に資力・信用が認められない 条文は「必要な資力及び信用があると認められないこと」を不許可事由に挙げている。
だから添付書類に資力・信用を証する書面が入っている。
③ 周辺農地への被害防除措置が適切でない 土砂の流出・崩壊のおそれ、農業用用排水施設の機能への支障など。擁壁や排水計画は、費用の話であると同時に、許可の話だ。
④ 目的が曖昧・造成だけ 農林水産省は「具体的な転用目的を有しない投機目的、資産保有目的での農地の取得は認めない」と明言している。
群馬県も「土地の造成だけを行う転用は、市町村が行うもの等を除き不許可」としている。
行政書士に頼むか、自分でやるか
- 自分でやれる可能性が高い……市街化区域の届出(随時受付で書類が軽い)、第3種農地で平坦・接道済みの自宅1軒、地目変更登記。
- 頼んだほうがよい……農振除外から始まる、他法令(開発許可・接道など)が絡む、5条で売主との連署と期限管理がある、事業用地や造成を伴う。
見積もりを取るときは、「どの区分の農地か」「農振除外は要るか」「他法令は何が絡むか」の3点を先に伝える。
統計の最小値5,000円と最大値161万8,720円の間には、そういう中身の差がある。
さんぼう君の視点:順番を間違えた土地は、戻ってこない
畑を買い、代金を払ってから役所で「ここは農用地区域なので転用できません」と言われる。
これが典型的な失敗の型だ。
だから順番は役所 → 土地 → 契約しかない。
制度は「転用させないため」だけにあるわけではない。
令和5年の農地転用面積は1万6,184ha。
ピークだった昭和48年の6万7,720haの4分の1以下だが、毎年これだけの農地が姿を変えている。
区分の線引きは、周りで耕している人を守るための線だ。
買うのがまだ重いなら、借りるという道もある。
よくある質問(FAQ)
Q. 農地転用の費用は、結局いくら見ておけばいいですか?
手続き部分は、行政書士に頼んで5万〜15万円が中心帯です。
申請手数料は原則かからず、地目変更登記の登録免許税もゼロ。
金額が跳ねるのは造成です。
Q. 申請から許可まで、どのくらいかかりますか?
公表値では宇都宮市が受付締切日から42日、北海道の知事許可が70日です。
月1回の締切待ちを足して2〜3か月を見てください。
青地なら農振除外の期間が上乗せされます。
Q. 4条と5条は、どう違うのですか?
自分の農地を自分で転用するのが4条、転用目的で売買・貸借するのが5条(譲渡人と譲受人が連署)です。
畑を買って家を建てるなら5条です。
Q. 市街化区域の農地は、許可なしで転用できると聞きました。
そのとおりです。
農地法4条1項7号・5条1項6号により、あらかじめ農業委員会に届け出れば、許可を受けずに転用できます。
ただし評価も税も宅地並みです。
Q. どうやって「転用できない土地」を見分ければいいですか?
登記簿では見分けられません。地番が分かった時点で、農政担当課・農業委員会・都市計画担当課の3か所で確認してください。農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地は原則不許可です。
Q. 転用の許可が出たあと、登記はどうすればいいですか?
地目が変わった日から1か月以内に地目変更登記を申請します(不動産登記法37条1項)。
怠ると10万円以下の過料(同164条1項)。
登録免許税はかからず、自分で申請することもできます。
まとめ──金額より先に、色を確かめる
- 農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地は原則不許可。市街化区域だけは届出で転用できる
- 費用の主役は行政書士報酬(5条は5万〜15万円が約7割)と造成費。期間は標準処理期間+月次の締切
契約書に判を押す前に、3か所で色を確かめてほしい。順番さえ守れば、あとはマイペースでいい。
📚 参考・出典(19件・すべて2026年9月11日確認)
法令の条文はe-Gov法令検索の現行条文、制度の骨格は農林水産省の公表資料、報酬は日本行政書士会連合会の統計、手続きの締切・標準処理期間は各自治体が公表しているものを確認した。許可基準の運用と処理期間は市町村・都道府県ごとに異なる。本記事の整理は一般的なもので、個別の許可の可否や金額を保証するものではない。
- e-Gov法令検索「農地法」(昭和27年法律第229号・現行条文) ― 第4条第1項(都道府県知事等の許可・指定市町村)・同項第7号(市街化区域は届出)・第2項〜第4項(農業委員会経由、30a超の意見聴取)、第5条第1項(転用目的の権利移動)・同項第6号(市街化区域は届出)・第2項第1号イ(農用地区域内は不許可)・第3号(資力信用・同意・転用の確実性)・第4号(土砂の流出、用排水施設の機能支障)、第51条(違反転用に対する工事停止・原状回復命令・公表・代執行)、第64条(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)、第67条第1号(法人は1億円以下の罰金)
- e-Gov法令検索「農業振興地域の整備に関する法律」(昭和44年法律第58号) ― 第8条(農用地区域の設定)、第13条第2項(農用地区域から除外するための6要件)、第15条の2(農用地区域内における開発行為の制限)、第17条(農用地区域内の転用許可の処分の制限)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(平成16年法律第123号) ― 第37条第1項(地目の変更があった日から1月以内に変更登記を申請する義務)、第164条第1項(怠った場合は10万円以下の過料)
- 農林水産省「農地転用許可制度について」 ― 制度の全体像と、以下の各資料の掲載元
- 農林水産省「農地転用許可制度の概要」(PDF) ― 農地区分5種類(農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地・第2種農地・第3種農地)と許可の方針、甲種・第1種の例外(集落接続の住宅等、甲種は500㎡以内)、許可権者と4ha超の大臣協議、市街化区域は届出、一般基準の不許可事由、「具体的な転用目的を有しない投機目的、資産保有目的での農地の取得は認めない」
- 農林水産省「農地転用許可の手続について」(PDF) ― 4条=転用する者/5条=譲渡人と譲受人が連署、30a以下と30a超の手続きの違い(都道府県農業委員会ネットワーク機構の意見聴取)、許可申請書の添付書類7種、市街化区域の届出の添付書類
- 農林水産省「農業振興地域制度と農地転用許可制度の概要」(PDF) ― 農業振興地域制度(ゾーニング)と農地転用許可制度(個別規制)の関係、農用地区域は転用禁止で転用には農用地区域の変更が必要である旨
- 農林水産省「農地法第4条、第5条別の農地転用の推移(R5)」(PDF) ― 令和5年の4条は許可8,319件・届出13,161件の計21,480件(1,303ha)、5条は許可55,262件・届出40,622件の計95,884件(8,512ha)
- 農林水産省「農地転用の推移(R5)」(PDF) ― 令和5年の許可63,581件・6,650ha、届出53,783件・3,164ha、転用面積の合計16,184ha、昭和48年のピーク67,720ha
- 農林水産省「農地転用許可に係る権限移譲について(概要)」(PDF) ― 平成28年4月1日以降、2〜4haの国協議は廃止、4ha超は国協議を付したうえで都道府県・指定市町村へ移譲
- 日本行政書士会連合会「報酬額の統計」/令和7年度報酬額統計調査の結果(PDF・令和8年1月実施) ― 農地法4条許可申請は回答273人・平均96,893円・最頻値80,000円・最小8,800円・最大800,000円、5条許可申請は回答501人・平均120,186円・最頻値100,000円・最小5,000円・最大1,618,720円(5万〜10万円未満42.1%、10万〜15万円未満29.1%)、3条許可申請は平均58,616円、3条の3の届出は平均23,502円。行政書士法第10条の2第2項に基づき5年に1度実施、金額は消費税込み・立替金は含まない
- 熊本地方法務局「非農地通知書により地目変更の登記申請をされる方へ」 ― 「地目変更登記は,登録免許税がかかりません(無料)」、申請から登記完了まで1〜2週間程度、本人申請と土地家屋調査士への依頼の両方がある旨
- 法務局「土地地目変更登記申請書 記載例(畑から宅地に変更した場合)」(PDF) ― 添付情報は農地法の規定による都道府県知事等の許可書、農業委員会の現況証明書や都市計画法の許可書を添付する場合もある旨
- 国税庁 財産評価基準書「令和8年分 栃木県 宅地造成費の金額表」(PDF) ― 平坦地の宅地造成費=整地費800円/㎡、伐採・抜根費1,100円/㎡、地盤改良費2,300円/㎡、土盛費8,100円/㎥、土止費(擁壁面積)90,600円/㎡。市街地農地等の財産評価に用いる金額であり、実際の工事見積もりではない
- 北海道 農政部農業経営局農地調整課「農地を転用するには」 ― 農地転用の定義、一時使用にも許可が必要(ごく短期間の例外の取扱い)、無許可なら法律行為が無効で所有権移転登記もできない旨、4条と5条の申請者、農地区分5種類の要件、審査事項、知事許可の標準処理期間は70日(うち農業委員会の経由期間60日)
- 栃木県宇都宮市「農地の転用」(令和8年4月17日更新) ― 平成30年10月1日から農地転用許可の指定市町村、市街化区域は届出・それ以外は許可、市街化区域以外の許可申請の締切は毎月月末、市街化区域の届出は随時受付、受付締切日から許可書交付までの標準処理期間42日、令和7年4月1日以降は地域計画区域内なら地域計画の変更手続きが先、2アール未満の農業用施設は許可不要(願出が必要)
- 群馬県「農地法に基づく農地転用許可制度(農地法第4条・第5条)」(2025年4月1日更新) ― 4条・5条の処分庁と処分権の範囲、市町村への権限移譲(12市2町1村)、4ha超は大臣協議、農地区分5種類(第2種は「鉄道の駅が500m以内にある等」、第3種は「鉄道の駅が300m以内にある等」)、一般基準で「土地の造成だけを行う転用は、市町村が行うもの等を除き不許可」
- 愛知県豊田市「農振除外(農用地区域からの除外)手続き」(2026年6月26日更新) ― 農振除外の6要件、申出受付は2月・5月・8月・11月の月初め3日間、受付から計画変更まで約6か月、用途区分変更は毎月受付で約3か月、申出がすべて認められるわけではない旨、地域計画変更申出書の同時提出
- 農林水産省「eMAFF農地ナビ」 ― 農地台帳・農地地図の一般公開
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この記事は、農業と畜産を営む家で育った経験と、飼料営業として担当エリアの現場で見聞きしたことに基づいています。 個別の経営判断は、必ず担当の税理士・士業・JA・農業委員会等にご相談ください。
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