経営の知恵

牛は一頭いくら?子牛84万円・肥育牛129万円の最新相場


牛は一頭いくら?子牛84万円・肥育牛129万円の最新相場
📑 目次

※本記事はプロモーションを含みます。

「牛って、一頭いくらするんだろう」 「和牛とホルスタインで、値段はどれくらい違うの?」

牛舎の前を通りかかった人からも、就農を考え始めた人からも、いちばん最初に出てくるのがこの質問だ。

先に答えを置く。牛の値段は「品種」と「どの段階の牛か」の掛け算で決まる。同じ「牛一頭」でも、生まれた翌週に9万円で取引される牛と、出荷時に130万円を超える牛がいる。だから「牛一頭いくら」に一言で答えると、必ずどこかが嘘になる。

本記事は、その掛け算の表を全部並べる値段の辞典である。数字はすべて2026年8月25日時点で確認した公表データにもとづく。

先に結論。牛一頭の値段はこの5段階で覚える

① 生まれたて(初生牛)=9万〜50万円。ホルスタインのオスが約9万4,000円、F1が約17万9,000円、黒毛和種のオスが約49万8,000円。生後1週間ですでに5倍以上の差がついている(ホクレン市場・2026年7月・税込)。

② セリに出る子牛(素牛)=25万〜84万円。黒毛和種84万3,600円、交雑種46万1,400円、乳用種24万8,600円(2026年4〜6月・農水省告示)。世間が「子牛が高い」と言うのは、この黒毛和種の数字のこと。

③ 肥育を終えた出荷牛=58万〜137万円。和牛去勢A-5なら枝肉517kg×2,652円/kgで約137万円。乳用種去勢B-2は約58万円。統計上の実売平均は和牛肥育牛で128万9,233円(令和6年統計)。

④ 乳牛は「妊娠しているか」で値が変わる。育成牛35万8,000円、初妊牛63万1,000円、経産牛48万円、廃用牛31万円(ホクレン乳牛市場・2026年7月・税込)。

⑤ そして重要な事実。売値は生産費に届いていない。令和6年の統計では、和牛肥育牛は売値128万9,233円に対し生産費137万5,264円。1頭あたり8万6,000円のマイナスである。値段が高いことと、儲かることは別の話だ。

この記事で分かること

  • 生まれてから出荷までの5段階それぞれの値段を、公表データの実数値で
  • 和牛・交雑種(F1)・ホルスタインで、なぜ値段が5倍も違うのか
  • 子牛の値段が「1頭いくら」ではなく「1kgいくら」で決まるという取引の実務
  • 乳牛(育成牛・初妊牛・経産牛・廃用牛)の相場と、酪農の1頭あたり経費
  • 牛1頭から取れる肉は何キロか——生体700kgのゆくえ
  • そして「買う値段」と「売れる値段」の差が、いま何を意味しているか

⚠️ この記事は「いくらか」を並べた値段の辞典だ。「では、いくら残るのか」という経営の損益は、牛1頭の価値を見極める。繁殖・肥育それぞれの損益分岐点に分けて書いてある。値段を知りたい人はこのまま下へ、採算を計算したい人はそちらへどうぞ。

牛飼い君
牛一頭いくらか調べたら、9万円って書いてるサイトと130万円って書いてるサイトがあって混乱したよ。
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
どっちも正しいんだ。生まれたてのホルスタインのオスと、2年半育てた和牛では、そもそも別の商品だからね。まず「どの段階の話か」を決めよう。

段階別の早見表——牛は育つほど値段が変わる

細かい話に入る前に、全体像を一枚にしておく。

段階月齢の目安黒毛和種交雑種(F1)ホルスタイン(乳用種)
① 初生牛(生まれたて)生後1〜2週約49万8,000円約17万9,000円約9万4,000円
② 子牛(セリの素牛)8〜10か月約84万3,600円約46万1,400円約24万8,600円
③ 出荷牛(枝肉換算)26〜30か月約137万円(A-5)約102万円(B-3)約58万円(B-2)
④ 繁殖・廃用(母牛の出口)約61万5,000円(南北海道地区)約31万円

注:①はホクレン市場の2026年7月・税込(初生はオス)、②は農林水産省が告示した令和8年度第1四半期(2026年4〜6月)の平均売買価格、③は東京市場の2026年7月枝肉単価(速報値・税込)に2025年度の平均枝肉重量を掛けた本記事の試算、④はホクレン市場の2026年7月・税込。相場は毎月動くので、水準感をつかむための表として見てほしい。

この表がすべてを説明している。牛の値段は「品種で決まった差」を、育てた期間だけ大きくしていく構造になっている。生まれた時点で5倍あった差は、出荷時にも2倍以上残る。

① 生まれたての牛は9万円から——初生牛(ヌレ子)の値段

まず、いちばん値段が安い段階から。

生後1〜2週間の子牛は初生牛(しょせいぎゅう)と呼ばれ、現場では「ヌレ子」と言う。酪農家は牛乳を搾るために乳牛を毎年妊娠・分娩させるが、生まれた子牛のうちオスは搾乳できない。そこで肉用に育てる農家へ売られる。この取引が初生牛市場だ。

ホクレン家畜市場の2026年7月・税込(ホクレン市場合計)で見ると、こうなる。

品種(オス)2026年7月の平均価格最高値
黒毛和種498,064円713,900円
乳用交雑(F1)178,538円320,100円
ホルスタイン94,469円245,300円

生後2週間の牛に、すでに49万8,000円と9万4,000円という開きがある。この時点でついている差は、能力の実測値ではない。「この先どう育つか」という期待値がそのまま値段になっている

なお同じ表には最低価格も出ていて、ホルスタインの最低は110円である。健康状態に問題のある個体はこうなる。生き物を扱う市場の、飾らない一面だ。

私は飼料と畜産資材の代理店営業を13年やってきた。北海道の初生牛市場は、聞くところでは1頭あたり十数秒で値が決まるほど回転が速いという。事前に体格と血統の情報を頭に入れていない人は、手を挙げそびれて終わる——そういう世界だ。

牛飼い君
生まれたてで50万円って、和牛って最初から高いんだね。
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
そう。しかもこの50万円は、育てる側にとっては「原価のスタート地点」なんだ。ここから8か月ぶん飼料代が乗って、次のセリに出る。

② 子牛(素牛)は25万〜84万円——ここが「牛の値段」の本丸

「牛一頭いくら」と検索する人が本当に知りたい数字は、たいていここにある。

生後8〜10か月まで育てた子牛を素牛(もとうし)と呼び、家畜市場のセリで肥育農家に売られる。この価格は国が四半期ごとに告示している。

2026年4〜6月の平均売買価格(農林水産省告示)

肉用子牛生産者補給金制度にもとづき、2026年7月22日付の官報で告示された数字がこれだ。

品種区分平均売買価格(円/頭)保証基準価格合理化目標価格
黒毛和種843,600円600,000円457,000円
褐毛和種(あか牛)736,300円547,000円417,000円
交雑種(F1)461,400円274,000円216,000円
乳用種(ホルスタイン等)248,600円174,000円119,000円
その他の肉専用種―(算定期間が1年のため)348,000円265,000円

注:この平均売買価格は雌と去勢を合わせた数字である。去勢だけを取り出すと雌より高く出るため、ニュースで見かける「和牛子牛89万円」といった数字と一致しないことがある。母集団の取り方で数万円の差が出るのは、統計の性質上ふつうのことだ。

保証基準価格とは、これを下回ると国から生産者へ補給金が出る「下支えのライン」である。黒毛和種は60万円。いまの平均売買価格84万3,600円はそれを大きく上回っているため、この四半期の補給金単価はいずれの品種も「―」(発動なし)となっている。

言い換えれば、いまの子牛相場は「国が助けなくていい水準」まで来ている。繁殖農家にとっては久しぶりの追い風だ。ただしこれは同時に、買う側の肥育農家にとって原価が跳ね上がっているという意味でもある。この二面性は子牛86万円時代、いくらで売れば採算が合うのかに電卓を叩いて書いた。

実際のセリ場では、市場ごとにいくらか

四半期の平均だけでは、現場の温度感は伝わらない。農畜産業振興機構(ALIC)が公開している主要家畜市場の速報(2026年8月24日公開)で、2026年8月開催分の平均価格を全国から拾うと、市場ごとにおおむね77万〜92万円のレンジ(中心は84万円前後)に収まっている。

産地の格差より、多くの市場が80万円台に収まっていることのほうが目を引く。全国38市場の平均は約84万円で、中心は80万円台前半〜半ばだ。子牛は全国流通する商品なので、相場は連動しやすい。

子牛の値段は「1頭いくら」ではなく「1kgいくら」

ここが一般にはほとんど知られていない実務の話だ。

セリ場で値をつけるとき、買い手が見ているのは総額ではなくkg単価である。ホクレン家畜市場の肉牛市場情報(2026年7月・税込)から、十勝地区の黒毛和種去勢の集計を見てみる。

項目数値
販売頭数2,487頭
平均体重353kg
平均価格919,000円
平均単価2,607円/kg

同じ市場の南北海道地区でも、去勢計は平均体重344kg・平均882,000円・2,561円/kg単価はほぼ揃っていて、総額の差は体重の差であることが分かる。

だから現場では「あの牛は高かった」ではなく「今日は2,600円だった」という言い方をする。体重の重い子牛は総額が高くなるが、単価が同じなら買い手の損得は変わらない——この感覚を持っているかどうかが、セリ場での初心者と経験者の分かれ目になる。実際の見極め方は子牛セリ市場の歩き方にまとめてある。

③ 肥育を終えた牛は58万〜137万円——枝肉でいくらになるか

素牛を導入した肥育農家は、そこから20か月前後かけて仕上げ、食肉市場へ出荷する。ここで初めて「牛肉」としての値段がつく。

牛は生きたまま売られるのではなく、皮と内臓を外した枝肉(えだにく)の状態で、kg単価に重量を掛けて取引される。だから出荷牛の値段は「単価 × 枝肉重量」の掛け算だ。

枝肉のkg単価(東京市場・2026年7月速報値・税込)

区分単価前年比
和牛去勢 A-52,652円/kg107.9%
和牛去勢 A-42,452円/kg113.8%
交雑種去勢 B-31,894円/kg117.7%
乳用種去勢 B-21,320円/kg107.8%

平均枝肉重量(2025年度・全国・日本食肉格付協会)

区分平均枝肉重量
黒毛和種去勢516.9kg
交雑種去勢540.9kg
乳用種去勢436.1kg

意外に思われるかもしれないが、枝肉がいちばん重いのは交雑種である。ホルスタインの体格の大きさを受け継ぐためだ。それでも和牛のほうが総額で上回るのは、単価が違いすぎるからにほかならない。

掛け算すると、1頭あたりの売上はこうなる

区分計算1頭あたり
和牛去勢 A-52,652円 × 516.9kg約137万円
和牛去勢 A-42,452円 × 516.9kg約127万円
交雑種去勢 B-31,894円 × 540.9kg約102万円
乳用種去勢 B-21,320円 × 436.1kg約58万円

注:単価は2026年7月の速報値、枝肉重量は2025年度の年間平均であり、期間の異なる数字を掛け合わせた本記事の試算である。円単位の正確さを出すためではなく、桁と方向をつかむための表として扱ってほしい。

この試算は、統計の実数値ともよく合う。農林水産省の令和6年畜産物生産費統計によれば、去勢若齢肥育牛(=和牛の肥育牛)1頭当たりの販売価格は128万9,233円。A-5とA-4の間に着地しており、試算の妥当性が裏づけられる。

なぜ和牛だけ「A-5」で語られるのか

もう一つ、一般にはあまり知られていない事実がある。和牛の去勢牛は、いまや大半がA-5に格付けされる

2025年度・全国の格付結果(日本食肉格付協会)を見ると、黒毛和種去勢牛26万8,533頭のうち——

  • A-5:74.3%
  • A-4:20.7%
  • A-3:3.6%

3頭に2頭どころか、4頭に3頭がA-5である。2023年度は64.9%だったので、2年で約10ポイント上がった。改良と飼養技術の進歩が数字に出ている。

一方、同じ年度の交雑種去勢牛はB-3が32.2%で最多乳用種去勢牛はB-2が58.1%。品種によって、そもそも出やすい等級がまったく違う。格付けの読み方そのものは枝肉相場の読み方に詳しく書いた。

牛飼い君
和牛の4頭に3頭がA5なら、A5ってもう「特別」じゃないの?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
鋭いところだね。黒毛和種の中ではA5が標準に近づいてきている。ただA5の中にもBMS No.8から12まで幅があって、市場ではそこで値が分かれるんだ。だからA5を取っただけでは差がつきにくくなっている、というのが今の実感だよ。

④ 乳牛はいくら?——「妊娠しているか」で値段が変わる

肉用牛とはまったく別の値段体系があるのが乳牛だ。乳牛は肉のためではなく牛乳を出すために売買されるので、評価軸が変わる。

ホクレン乳牛市場の2026年7月・税込(速報版)から。

区分2026年7月の平均価格内容
育成牛約35万8,000円まだ妊娠していない若い雌牛
初妊牛約63万1,000円初めて妊娠し、分娩間近の雌牛
経産牛約48万円出産経験のある搾乳牛
乳用種廃用牛310,704円搾乳を終えて肉用に回る牛

いちばん高いのが初妊牛である。買ったその年から搾れるからだ。育成牛との差は約27万円。この差額が「妊娠している」という状態の値段ということになる。

なお2026年度(4〜7月)の累計平均では、育成牛35万5,000円・初妊牛66万3,000円・経産牛52万円。前年度(令和7年度)の初妊牛68万4,000円と比べると、やや落ち着いた水準にある。

乳牛は「買った値段」より「毎年かかる値段」が重い

乳牛で本当に効いてくるのは購入価格ではない。

農林水産省の令和6年畜産物生産費統計によれば、搾乳牛1頭当たりの全算入生産費は100万8,759円(北海道96万2,383円、都府県106万7,070円)。63万円で買った牛に、毎年100万円の経費がかかるという構造だ。

肉用牛が「1回売って終わり」なのに対し、酪農は「毎年搾って毎年経費が出ていく」。同じ牛でも経済の形がまったく違う。この違いは畜産と酪農の違いとは?牛農家3タイプを現場目線で比較酪農家の年収はいくら?にまとめてある。

⑤ 和牛・交雑種・ホルスタイン——なぜ値段が5倍違うのか

ここまでの数字を品種で切り直すと、差の正体が見えてくる。

品種初生(生後1〜2週)子牛(8〜10か月)出荷(枝肉換算)
黒毛和種約49万8,000円約84万3,600円約137万円(A-5)
交雑種(F1)約17万9,000円約46万1,400円約102万円(B-3)
ホルスタイン約9万4,000円約24万8,600円約58万円(B-2)

差がついている理由は、大きく3つある。

1. 枝肉のkg単価がそもそも倍違う。和牛A-5の2,652円/kgに対し、乳用種B-2は1,320円/kg。ちょうど2倍だ。脂肪交雑(サシ)の入り方が価格に直結する日本の格付制度では、この差は構造的なものになる。

2. 出やすい等級が違う。和牛去勢はA-5が74.3%だが、乳用種去勢はB-2が58.1%。「頑張ればホルスタインでもA-5が出る」という話ではない。品種ごとに到達できる範囲が違う。

3. 交雑種(F1)はちょうど中間に位置する。F1は黒毛和種の種を乳用牛に付けて生まれる牛で、和牛の肉質とホルスタインの増体を併せ持つ。枝肉重量は540.9kgと3品種で最大、単価は和牛と乳用種の中間。「和牛ほど高くないが、量は取れる」というポジションで、国産牛の主力を担っている。

「和牛」と「国産牛」という表示の違いに戸惑ったことがある人は、和牛と国産牛の違いとは?を先に読むと、この表がもっと立体的に見えるはずだ。品種そのものの解説は和牛の種類は4品種にある。

番外:牛1頭から、肉は何キロ取れるのか

「一頭いくら」の次に多い質問がこれだ。

広島市が公開している資料によれば、体重700kgの牛1頭から取れる正肉は約310kg。内訳はこうなっている。

内容重量
正肉310kg
内臓(タン・ハツ・レバー・ミノなど)150kg
70kg
50kg
42kg

生体重の約44%が食べられる肉になる計算だ(※内訳の合計が700kgに満たないのは、血液や消化管内容物などが含まれないため)。残りも捨てられるわけではなく、内臓は食用に、皮は革製品に、骨や脂は加工原料に回る。

仮に137万円で売れた和牛の枝肉517kgに、上の比率(枝肉から正肉への歩留まり約76%)を当てると、正肉は約390kg。農家側の受取ベースでは1kgあたり約3,500円という粗い目安になる(※体格の異なる牛のデータを組み合わせた筆者概算)。ここに解体・加工・流通・小売の各段階が乗って、店頭価格になる。スーパーの和牛の値札を見て「農家はさぞ儲かっているだろう」と思われがちだが、農家が受け取っているのはこの3,500円のほうである。

(PR) 数字を見たあとで、実物を確かめてみる

相場の話をひととおり読んだあとは、実際の商品がいくらで売られているかを見ておくと理解が一段深まる。同じ「A5和牛」でも、部位・産地・グラム数で価格帯がまるごと変わるのが分かるはずだ。贈答用の詰め合わせから、家庭で試せる少量パックまで幅が広い。産地表示と等級表示を照らし合わせながら眺めるだけでも、この記事の表がぐっと身近になる。

Amazonで和牛ギフトの価格帯を見る

Amazonの検索結果ページが開きます。価格・在庫は変動します

ふるさと納税の返礼品で和牛を選ぶ場合の見方は、ふるさと納税で和牛を選ぶコツ7選に別途まとめている。

⑥ 「買う値段」と「売れる値段」は、噛み合っていない

最後に、この記事でいちばん伝えたいことを書く。

ここまで並べてきたのは「いくらで取引されるか」という値段だ。しかし農家にとって本当に重要なのは「いくらで作れるか」との差である。

農林水産省の令和6年畜産物生産費統計(2025年12月19日公表)から、3つの肥育牛を並べる。

区分1頭当たり全算入生産費1頭当たり販売価格
去勢若齢肥育牛(和牛)1,375,264円1,289,233円▲86,031円
交雑種肥育牛818,721円799,150円▲19,571円
乳用雄肥育牛553,847円485,740円▲68,107円

3品種すべてで、売値が生産費に届いていない。

和牛肥育牛の費用構成を見ると、もと畜費(素牛の購入代)が71万3,400円で費用合計の52.0%、飼料費が47万9,085円で34.9%。この2つで9割近くを占める。肥育農家の原価の半分は、子牛のセリでついた値段そのものなのだ。

だから「子牛が84万円」というニュースは、繁殖農家には朗報で、肥育農家には原価上昇の通告になる。同じ数字が、立場によって正反対の意味を持つ。

牛飼い君
全部マイナスなら、肥育農家はどうやって続けてるの?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
牛マルキン(肉用牛肥育経営安定交付金)や配合飼料価格安定制度といった下支えの仕組みがあるんだ。それと、統計は全国平均だから、自分の牛舎の数字はここから上にも下にもぶれる。だからこそ「平均を見る」で終わらせずに、自分の1頭あたりを出すのが大事なんだよ。

ここから先——自分の経営で1頭あたりいくら残るのかを計算する話は、この記事の役目ではない。損益分岐点の出し方と「赤字牛」の見抜き方は牛1頭の価値を見極める。繁殖・肥育それぞれの損益分岐点に、2026年の高値相場に絞った電卓の叩き方は子牛86万円時代、いくらで売れば採算が合うのかに、それぞれ分けて書いてある。

この記事は「値段の辞典」、あちらは「採算の計算書」。順番に読むと、牛という商品の全体像がつながるはずだ。

よくある質問

Q. 結局、牛は一頭いくらと答えればいいですか。 A. 品種と段階を添えて答えるのが正確です。いちばん一般的な「和牛の子牛(8〜10か月)」なら約84万円(2026年4〜6月・全国平均)、「肥育を終えた和牛」なら約130万円前後、「生まれたてのホルスタインのオス」なら約9万円。ざっくり伝えるなら「10万円から140万円まで、育ち具合で全然違う」が実態に近い言い方です。

Q. なぜ和牛はホルスタインの5倍もするのですか。 A. 枝肉のkg単価が約2倍違ううえ、出やすい等級そのものが違うからです。2025年度の格付結果では和牛去勢の74.3%がA-5、乳用種去勢の58.1%がB-2でした。この差は飼い方の努力より、品種の特性によるところが大きいのが実際です。

Q. 個人でも牛を1頭買えますか。 A. 家畜市場のセリで買うには、市場ごとに定められた参加資格(購買者登録)が必要で、誰でも当日ふらりと買えるものではありません。また牛を飼うには家畜排せつ物法や飼養衛生管理基準への対応、家畜伝染病予防法にもとづく届出など、法令上の要件がついてまわります。飼うことを本気で検討するなら、まずお住まいの都道府県の家畜保健衛生所と農業改良普及センターに相談するのが最短です。値段より先に、そちらの確認をおすすめします。

まとめ

  • 牛の値段は「品種 × 段階」の掛け算で決まる。一言で答えると必ずどこかが嘘になる
  • 初生牛:黒毛和種オス約49万8,000円/F1約17万9,000円/ホルスタイン約9万4,000円(2026年7月・ホクレン)
  • 子牛(素牛):黒毛和種84万3,600円/交雑種46万1,400円/乳用種24万8,600円(2026年4〜6月・農水省告示)
  • 子牛の値段は総額ではなくkg単価で決まる。十勝の黒毛去勢は2,607円/kg・平均体重353kg
  • 出荷牛:和牛A-5で約137万円、交雑種B-3で約102万円、乳用種B-2で約58万円(試算)
  • 和牛去勢の74.3%がA-5。2023年度の64.9%から2年で約10ポイント上昇した
  • 乳牛:初妊牛が最も高く約63万1,000円。育成牛との差27万円が「妊娠している」ことの値段
  • 牛1頭(体重700kg)から取れる正肉は約310kg。生体重の約44%
  • そして令和6年は3品種すべてで売値が生産費に届いていない。和牛肥育牛で1頭▲8万6,031円
  • 和牛肥育の原価は52.0%がもと畜費。子牛のセリ値がそのまま肥育農家の原価になる

牛の値段を知ることは、牛肉の値段の理由を知ることでもある。店頭の値札の向こう側には、生まれた週に値がつき、8か月後にもう一度値がつき、2年半後に3度目の値がつく——そういう長い時間が積み重なっている。

数字は毎月動く。だが「どこで値がつくのか」という構造は変わらない。その骨格さえ持っておけば、来年の相場ニュースも自分で読めるようになる。

マイペースにいきましょう。

あわせて読みたい

📚 参考・出典(11件・すべて2026年8月25日確認)

相場は毎月変動する。実際の売買判断は、必ず最新の市場速報とご自身の経営数値で行ってほしい。本記事の掛け算による試算は筆者の計算であり、特定の取引や経営における金額を保証するものではない。

  • 農林水産省 畜産局「肉用子牛の平均売買価格について(令和8年度第1四半期)」令和8年7月22日告示(黒毛和種843,600円・褐毛和種736,300円・乳用種248,600円・交雑種461,400円、保証基準価格および合理化目標価格、補給金単価はいずれも「―」) https://www.maff.go.jp/j/chikusan/shokuniku/lin/attach/pdf/index-581.pdf
  • 農畜産業振興機構(ALIC)「主要な家畜市場における子牛の取引状況(黒毛和種)(速報)」2026年8月24日公開(全国の主要家畜市場ごとの月別平均価格・上場頭数・成立率。2026年8月開催分のレンジは同資料から筆者集計) https://www.alic.go.jp/content/001284385.pdf
  • 農畜産業振興機構(ALIC)「肉用子牛取引情報」(掲載資料一覧・更新頻度) https://www.alic.go.jp/operation/livestock/calf-report.html
  • ホクレン農業協同組合連合会 家畜販売課「市場集計表(令和8年度・速報版・税込)」(乳牛市場成績一覧表=2026年7月 育成牛358千円・初妊牛631千円・経産牛480千円、令和7年度計 初妊牛684千円/乳用種廃用牛 2026年7月310,704円/ホル初生犢 同94,469円/黒毛和種雄初生 同498,064円/乳用交雑(F1)雄初生 同178,538円/肉牛市場情報7月版 十勝地区黒毛去勢計 平均体重353kg・平均919千円・2,607円/kg、南北海道地区去勢計 344kg・882千円・2,561円/kg、南北海道地区 黒毛 繁殖・廃用 平均615千円) https://www.kachiku.hokuren.or.jp/Downloadresult.aspx
  • JA全農ミートフーズ「牛肉|情勢|相場」(東京市場枝肉卸売価格・税込。2026年7月速報値〈7月31日時点〉 和牛去勢A-5 2,652円/kg・A-4 2,452円/kg・交雑去勢B-3 1,894円/kg・乳牛去勢B-2 1,320円/kg、いずれも前年比つき) https://www.jazmf.co.jp/market/situation/domestic_cattle.html
  • 公益社団法人 日本食肉格付協会「牛枝肉格付結果情報(出荷県別・年度)」2025年度・全国(黒毛和種去勢牛 平均枝肉重量516.9kg・A-5構成比74.3%/交雑種去勢牛 540.9kg・B-3が32.2%/乳用種去勢牛 436.1kg・B-2が58.1%。2023年度のA-5構成比64.9%も同資料) https://www.jmga.or.jp/rating/
  • 公益社団法人 日本食肉格付協会「牛枝肉格付結果(種別・性別)令和8年4月〜6月」(和牛去勢67,614頭のうちA-5が76.4%ほか、四半期ベースの格付結果) https://www.jmga.or.jp/assets/rating/ushi-shubetu-nendo_202606.xlsx
  • 独立行政法人 家畜改良センター 改良部情報分析課「枝肉成績とりまとめ概要(令和6年度)」令和7年12月12日(黒毛和種 令和6年度の平均枝肉重量 去勢513.4kg・雌459.8kg、日本食肉格付協会による令和6年度の和牛格付頭数529,071頭) https://www.nlbc.go.jp/assets/pdf/edadbgaiyou_r06.pdf
  • 農畜産業振興機構(ALIC)「令和6年『畜産物生産費統計』について」(畜産の情報2026年2月号。農水省公表は令和7年12月19日。去勢若齢肥育牛 全算入生産費1,375,264円・もと畜費713,400円〈52.0%〉・飼料費479,085円〈34.9%〉・販売価格1,289,233円/交雑種肥育牛 818,721円・799,150円/乳用雄肥育牛 553,847円・485,740円/搾乳牛 全算入生産費1,008,759円、北海道962,383円・都府県1,067,070円) https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_004072.html
  • みんなの農業広場「令和6年肉用牛生産費」2025年12月22日(子牛1頭当たり全算入生産費852,345円ほか区分別一覧) https://www.jeinou.com/topics/2025/12/22/090600.html
  • 広島市「1頭の牛からとれるもの」(体重700kgの牛1頭から 正肉310kg・内臓150kg・脂70kg・骨50kg・皮42kg) https://www.city.hiroshima.lg.jp/business/sangyo/1005945/1026462/1026463/1008854.html

─ 産地直送・目利き保証 ─

🏮 さんぼう君の新鮮市場

現場を知る大将が「間違いない肉と野菜」だけを並べました。肉のふるさと納税・お取り寄せ・野菜定期便 →


─ さんぼう君よりひとこと ─

この記事は、和牛農家の息子としての経験と、飼料営業として全国の現場で見聞きしたことに基づいています。 個別の経営判断は、必ず担当の税理士・士業・JA・農業委員会等にご相談ください。

この記事を書いた人

さんぼう君

和牛繁殖農家・野菜農家の息子。実家の「売り先が限られている/やり方次第でもっと稼げるはず」 という課題を追ううちに、畜産・農業経営の知識を深く積み上げてきました。 現場で学んだ「リアルな農業経営」を、業界外の人にもわかる言葉でお伝えしています。

→ さんぼう君について詳しく