農ある移住

農地を個人で借りるには?3つのルートと賃料相場


農地を個人で借りるには?3つのルートと賃料相場
📑 目次

※本記事はプロモーションを含みます。

牛飼い君
畑を買うほどの覚悟はないんだけど、プランターじゃもう物足りなくて。農地って、個人でも借りられるものなの?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
借りられるよ。しかも買うより2ケタ安い。ただね、2025年の4月に貸し借りのしくみが変わったんだ。ネットに残っている「利用権設定で借りましょう」という説明は、もう使えない。そこから話そうか。

買うほどじゃない。でも、まとまった広さの畑で作りたい」 「近所に空いた畑がある。声をかけたら貸してもらえるんだろうか

定年が見えてきた人、田舎へ移住を考えている人、家庭菜園の次の一歩を探している人。この相談は年々増えている。

先に答えを書く。農地は個人でも借りられる。所有するより手続きも負担も軽い。ただし「借りるだけなら自由」ではない。貸し借りにも、売買と同じ農地法3条の許可が要る。そして2025年(令和7年)4月から、農地の貸借のしくみそのものが変わった。ここを知らずに古い情報で動くと、役所の窓口で「その制度はもうありません」と言われる。

私は飼料と畜産資材の代理店営業を13年やり、数百軒の農家の庭先を回ってきた。実家も和牛の繁殖と野菜をやっている。その中でずっと見てきたのは、耕す人がいなくなった畑と、耕したい人が、出会えていないという風景だ。制度は、その出会いのために用意されている。使い方を知るかどうかだけの話だ。

先に結論。個人が農地を借りる4原則

① 借りるルートは3つ。農地法3条の許可/農地バンク(農地中間管理機構)/市民農園。目的によって選ぶ道が変わる。

② 「利用権設定」はもう使えない。市町村が相対契約でつくっていた農用地利用集積計画は、2025年4月に廃止された。古い解説記事に注意。

③ 賃料は10a(1反)で年5千円〜2万円台。買えば同じ広さで100万円前後。100年借りて、やっと買値に届く計算だ。

④ 自分で食べる分の野菜が目的なら、市民農園が最短。農地法の許可も要らず、年5千円未満の農園が約半数。遠回りしないでいい。

⚠️ 本記事は2026年8月26日時点で公開されている公的資料をもとにした一般的な整理です。農地制度の運用・申請の締切・要件は市町村ごとに異なり、変更されることもあります。実際の手続きは、必ず借りたい農地がある市町村の農業委員会でご確認ください

この記事でわかること

  • 農地を借りるときも、買うときと同じ「農地法3条の壁」があること
  • 2025年4月に何が廃止され、貸借のルートがどう再編されたか
  • 10a当たりの賃料が実際いくらか(3市の公表データで比較)
  • 農地バンクから借りるとき、本当のカギになるもの
  • 「野菜を作りたいだけ」の人が、いちばん早く畑に立つ方法
  • 口約束・無償・原状回復——後から効いてくる4つの落とし穴

まず値段の話をする。買うと100万円、借りると1万円

制度の説明の前に、いちばん知りたいところから行く。

一般社団法人全国農業会議所が2026年3月19日に公表した「令和7年田畑売買価格等に関する調査結果」によると、純農業地域(都市計画法の線引きをしていない市町村)の農用地区域の農地価格は、全国平均で中田103万1千円、中畑76万3千円(いずれも10a当たり)。この調査は1956年から毎年続いており、農地価格は1995年(平成7年)以降31年連続の下落だ。ピークだった1994年(平成6年・中田200万2千円)と比べると48.5%下落し、ほぼ半値になっている。

10a=1反=1,000㎡=約300坪。だいたいテニスコート4面分だ。それを買うと、田で100万円前後。

では借りると、いくらか。

農地の賃料には、全国一律の相場表というものが存在しない。かつてあった標準小作料の制度は、2009年(平成21年)の農地法改正で廃止された。代わりに定められたのが農地法第52条で、いま各市町村の農業委員会が「農地の賃借料情報」として、その地域で実際に結ばれた契約の平均額・最高額・最低額を毎年公表している。つまり、相場を知る正しい方法は「全国平均を探すこと」ではなく、借りたい市町村の賃借料情報を見ることだ。

実際に公表されている数字を、性格の違う3市で並べてみる。

市町村田(10a・年額)畑(10a・年額)データの時点
新潟県長岡市(市内全域)13,800円(30a未満の田)/18,300円(30〜50a)/20,000円(50a以上)5,300円令和8年7月発行
さいたま市(市全体)5,600円(最高21,500円・最低1,000円)8,200円(最高40,200円・最低4,000円)令和7年1〜12月に締結
岐阜県高山市(市全体)2,100円4,000円令和7年中に開始した貸借。無償の貸借を0円として算入しているため平均が低く出る(無償を除外する長岡市・さいたま市とは単純比較できない)

読み取れることは3つある。

その1。田の賃料は、区画が大きいほど高い。長岡市のデータがきれいに示している。30a未満の田は13,800円、50a以上の田は20,000円。機械が入りやすく効率よく作れる田ほど、借り手が付いて値が上がる。裏を返せば、小さい・機械が入りにくい農地は安い。個人が小さく借りるなら、そこは追い風になる。

その2。米どころと都市近郊では、田と畑の高い・安いが逆転する。長岡は田13,800円に対して畑5,300円。さいたま市は田5,600円に対して畑8,200円。米を作る土地として価値がある地域と、野菜を作る土地として価値がある地域とで、値段の付き方がまるで違う。

その3。同じ市の中でも、地域によって7倍違う。高山市の田の平均は市全体で2,100円(無償を0円として算入した平均)だが、旧市町村ごとに見ると清見1,000円、上宝600円、高山3,000円、国府7,200円と大きくばらつく。「県の相場」で考えても意味がない。集落単位で違うと思っておいたほうがいい。

そしてもう一つ、数字の裏側に大事な事実がある。高山市の公表資料には、賃料を取っている貸借の筆数と並んで使用貸借(=無償)の筆数が載っている。田では、有償の127筆に対して無償(使用貸借)が193筆(令和7年中)。この地域では、田はお金を取らずに貸しているほうが多いということだ。

牛飼い君
タダで貸してくれるの? それなら話が早いじゃないか。
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
「荒らさないでいてくれるだけでありがたい」——貸す側にはそういう気持ちがあるんだ。ただし無償には無償の弱点がある。後の落とし穴のところで、必ず読んでほしい。

畑に立つ前に、道具のほうも考えておきたい。借りる畑は、プランターと違ってまず草と土のコンディションから始まる。最初に要るのは高い農機ではなく、鍬・スコップ・手袋・如雨露といった基本の一式だ。

Amazonで「家庭菜園 道具 セット」を見る(PR)

どこまで買うべきか迷ったら、はじめての畑棚|家庭菜園の道具は最初にどこまで買うかに、買う順番と「まだ要らないもの」をまとめてある。

大前提:借りるときも「農地法3条」の壁は同じ

ここからが制度の話だ。まず、いちばん誤解されている点を潰しておく。

農地法3条の許可は、売買だけの話ではない。所有権の移転も、賃借権の設定も、使用貸借(無償で借りること)も、すべて同じ3条の許可の対象だ。「買うのは大変らしいけど、借りるだけなら気軽でしょう」——ここが最初の落とし穴になる。

そして許可の要件も、買う場合と同じものが並ぶ。

  1. 全部効率利用要件……所有している農地・借りている農地のすべてを効率的に耕作すること
  2. 農作業常時従事要件……申請者や世帯員が農作業に常時従事すること(農林水産省の資料では原則年間150日以上とされている)
  3. 地域調和要件……周辺の農地利用に支障を与えないこと

一方で、2023年(令和5年)4月1日に、下限面積要件は廃止された。かつては「取得後の農地面積が都府県で50a(5,000㎡)以上」といった最低ラインがあり、小さく借りたい人はそこで門前払いだった。この壁は制度ごと消えている。「小さいから借りられない」はなくなり、「耕す気がないなら持たせない」は残った。農地法の考え方は一貫している。

買う場合との違いを整理すると、こうなる。

農地を買う農地を借りる
農地法3条の許可必要同じく必要
許可の3要件効率利用・常時従事・地域調和同じ
初期費用10a当たり100万円前後+登記費用10a当たり年5千円〜2万円台(平均額のレンジ。最高4万円台の例も)
合わなかったとき売るのが難しい(買い手が減っている)期間満了で契約が終わる(3条許可の賃貸借の途中解約等には18条の許可が要る・後述)
固定資産税自分が払う貸し手が払う
向いている人骨を埋める覚悟が決まっている人まず試したい人・移住したての人

農地価格が31年下がり続けている理由の第1位は、全国農業会議所の調査によれば「農地の買い手の減少や買い控え」(中田35.4%、中畑41.1%)だ。売りたい人はいるが、買う人がいない。だからこそ、個人が最初に取るべき選択は、まず借りることだと私は思っている。土地は逃げない。合わなければ返せる借り方から入るほうが、はるかに安全だ。

農地を「買う」ほうの全体像は、母艦記事にまとめてある。

【重要】2025年4月に、貸し借りのしくみが変わった

ここが、いま検索して出てくる情報の大半が古くなっている部分だ。

かつて農地を借りる方法は、大きく2つあった。①農地法3条の許可を取る方法と、②市町村が農業経営基盤強化促進法に基づいて作る農用地利用集積計画(いわゆる利用権設定)だ。②は貸し手と借り手が相対(あいたい)で話をまとめ、市町村が計画に載せて公告すれば権利が設定される。農地法の許可が要らず、期間が来れば自動的に終わる。使い勝手がよく、農村では長年これが主流だった。

その②が、2025年(令和7年)4月1日に廃止された

農林水産省のQ&Aは、こう説明している。令和7年4月から農地の貸借は農地バンクを経由した方法に一本化され、ただし農地法第3条許可による手法は引き続き利用可能である、と。埼玉県嵐山町の案内も「現在の農業委員会による相対での農地の貸借制度が廃止となり、原則、『農地中間管理事業』を利用した貸借制度に一本化(統合)されます」と明記している。

背景には、2023年4月施行の改正農業経営基盤強化促進法がある。市町村は2025年3月末までに「地域計画」(人・農地プラン)を策定し、その中に一筆ごとに10年後の耕作者を書き込んだ「目標地図」を作ることになった。農地の貸し借りは、この地図を実現する方向に揃えていく——それが制度の設計思想だ。

消えたもの/残ったもの(2025年4月)

消えた:市町村の農用地利用集積計画による相対の利用権設定。「利用権設定で借りる」という説明は、新規にはもう使えない(設定済みの利用権は契約期間の満了日まで有効)。

残った・増えた:①農地法3条の許可(従来どおり使える) ②農地バンクの農用地利用集積等促進計画(新しい主役)。個人が借りるルートは、この2本+市民農園の計3本になった。

ルート①:農地法3条の許可(貸してくれる人を自分で見つける)

いちばん素直な方法だ。貸してくれる人を自分で見つけ、農業委員会の許可をもらって契約する

手順はおおむねこうなる。

  1. 先に農業委員会へ相談する。「移住して、これくらいの規模で作りたい」と伝え、その地域で借りられる条件を聞く。土地探しより先だ。
  2. 貸し手を探す。空き家バンク、地域の区長・農会長、JA、農地バンクの窓口。人づてが最も強い世界であることは、正直に言っておく。
  3. 農地の素性を調べる。農林水産省のeMAFF農地ナビなら、登録なしで全国の農地台帳・農地地図を閲覧できる。地番・地目・面積のほか、賃借権など権利の種類と存続期間、遊休農地かどうかも公表項目だ。
  4. 賃料を決める。農業委員会の賃借料情報を土台に、当事者で話し合う。あくまで目安で、拘束力はない。
  5. 3条許可を申請する。申請の締切と処理期間は自治体ごとに違う。たとえばさいたま市は毎月15日締切・標準処理期間30日、新潟県上越市は毎月10日締切としている。多くの市町村で月1回の農業委員会(総会・部会)で審議されるため、締切を1日過ぎれば結論は翌月になる。

作付けの時期から逆算するという発想を持ってほしい。春から作りたいなら、冬のうちに相談を始めておく。これだけで1シーズン違う。

そして、これは強く言っておきたい。許可を受けずにした貸し借りは、法律上「無効」だ。契約書を交わしていても、お金を払っていても、権利としては認められない。さらに農地法第64条第1号により、無許可の貸借には3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が定められている。「田舎ではみんな口約束でやっている」という話は現実にあるが、よそから来た人ほど、書面と許可で身を守るべきだ。

ルート②:農地バンク(農地中間管理機構)から借りる

2025年4月以降の「原則ルート」になったのが、こちらだ。

農地中間管理機構は、都道府県・市町村・農業団体などが出資し、都道府県知事が県に一つだけ指定する法人。地域によって「農地バンク」「機構」「公社」と呼び方が違う。所有者から農地を借り受け、担い手にまとめて貸し付けるのが仕事だ。

借りる側から見た手続きの流れは、農林水産省のQ&Aによればこうなる。

  1. 農業委員会が出し手・受け手の意向を確認する
  2. 市町村が地域計画(目標地図)を作成する
  3. 農地バンクが農用地利用集積等促進計画を作成する
  4. 都道府県知事が認可・公告する
  5. 農地を借り受ける

このルートの利点は、はっきりしている。

  • 農地法3条の許可がいらない。促進計画の公告によって権利が設定される
  • 期間満了で契約が確実に終わる(法定更新がないため、貸し手・借り手ともに期間の見通しが立つ)
  • 賃料の支払いが機構に一元化される。複数の地主から借りても振込は1本
  • 貸し手側にもメリットがある。2026年4月以降、地域計画ごとに所有農地の全部を同一年に農地バンクへ貸し付けた場合、10年以上の期間で貸した農地の固定資産税が3年間半減される措置がある

賃料は出し手・受け手・機構の三者が協議して決める。基準になるのは、やはり農業委員会が公表している賃借料情報だ。支払いの時期は機構ごとに扱いが異なる。

牛飼い君
じゃあ農地バンクに「貸してください」って申し込めばいいんだね。
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
そこがね、2023年の改正でいちばん変わったところなんだ。昔は「公募に応募する」のが入口だった。今はその前に、もっと大事な関門がある。

本当のカギは「目標地図に自分が載ること」

改正前、農地バンクは公募を前提に事業を行っていた。借受希望者が名簿に登録し、そこから選ばれるという建て付けだ。ところが2023年の改正で、農林水産省の資料には「農地バンクは、公募を前提に事業を行ってきたことに替えて、地域計画の達成に資するよう事業を実施」と明記された。

そして農林水産省のQ&Aで「農地を借りたい場合の相談先は」と問われた回答は、市町村または農業委員会に問い合わせること。基本は市町村が作成した地域計画に位置付けられることだとされている。

つまり、こういうことだ。農地バンクから借りたいなら、応募用紙より先に、その地域の目標地図に「あなた」を載せてもらう必要がある。そして地域計画は情勢の推移に応じて随時変更が可能とされている。新しく入ってきた人を後から書き加えられる、ということでもある。

だから移住者・新規参入者が取るべき動きは一つ。市町村の農政担当と農業委員会に会って、「この地域で農業をやりたい。地域計画に載せてもらうには何が要りますか」と正面から聞くことだ。これが遠回りに見えて、実はいちばん短い。

正直な注意点:バンクは「担い手向け」の色が濃い

ただし、期待値は正しく持っておきたい。

農地バンクの借受人の要件は、多くの機構で認定農業者・認定新規就農者・集落営農法人等の地域農業の担い手とされている(公益財団法人えひめ農林漁業振興機構の案内など)。借受農地を効率的に利用し、農作業に常時従事することが認められる必要がある、という条件も付く。

制度の目的が農地の集積・集約化である以上、これは当然の設計だ。分散した農地をまとめて担い手に渡すための仕組みであって、「週末に野菜を作りたい人」に小さな畑を配る仕組みではない。もう一つ、貸借期間は原則10年で、希望すれば5年まで短縮できる運用だ(千葉県四街道市の案内)。「まず1〜2年だけ試したい」という使い方には向かない。

もちろん、本気で就農するつもりなら道は開ける。認定新規就農者の認定を受け、地域計画に位置づけられれば、正面から借りられる。その段取りは新規就農 完全ロードマップ定年後に農業を始めるには?年金+農業のリアルな収支と始め方に分けて書いた。

ルート③:市民農園という、まっとうな抜け道

ここで、いちばん誠実な結論分岐を置く。

売るためではなく、自分と家族が食べる野菜を作りたい。それが目的なら、市民農園が最短で最良の答えだ。

農地法の許可も、地域計画も、認定も要らない。理由は、特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律(特定農地貸付法)という特例が用意されているからだ。次の3つをすべて満たす貸付けは、農地法の権利移動の許可を受けずに行える。

  1. 10アール未満の農地の貸付けで、相当数の者を対象として定型的な条件で行われること
  2. 営利を目的としない農作物の栽培のための貸付けであること
  3. 貸付期間が5年を超えないこと

10アールという線引きは、農林水産事務次官依命通知の中で「本来の農業を行う場合とそれ以外の場合との区切り」と説明されている。国が「趣味の農」と「生業の農」の境目をどこに置いているかが、はっきり読み取れる数字だ。

規模も見ておこう。農林水産省の市民農園開設状況調査によれば、2025年(令和7年)3月末時点で全国4,273農園・188,713区画・1,284ha。開設主体は地方公共団体1,977、農業者1,433、企業・NPO等449、農協414。根拠法別では特定農地貸付法によるものが3,679農園と大半を占める。ブロック別では関東が2,263農園と全体の5割以上で、都市部に厚い。

使う側の実態も、農林水産省が整理している。

項目実態
1区画の広さ50㎡未満が約8割、50〜100㎡未満が約2割
利用料年間5千円未満が約5割、5千円〜1万円未満が約3割。無料の農園もある
利用期間2年未満が約6割、2年以上5年未満が約4割
募集の時期利用開始の少し前、1〜3月に行われることが多い

50㎡=約15坪。二人暮らしの野菜なら、これで十分すぎるほど作れる。それが年5千円未満(日帰り型の平均利用料金は年14,308円で、農園による幅は大きい)。1反の農地を借りて草と格闘するより、まずここから始めるほうが、続く可能性ははるかに高い。市民農園の料金の実額と、小屋つきで滞在できるクラインガルテンについては、市民農園の料金相場|クラインガルテンとの違いで詳しく整理している。

もう一つ、農園利用方式(いわゆる入園契約方式)という形もある。開設者である農家が自分で農業経営を行い、利用者はそこに入園して農作業を行う。農地の権利が動かないため、農地制度上の手続きが要らないのが特徴だ。指導つきで学べる「体験農園」の多くがこの形で、市民農園整備促進法に基づくものだけでも農業者による開設が167農園ある。作り方を教わりながらやりたい人には、これが向く

3つのルートを、一枚にまとめておく。

①農地法3条②農地バンク③市民農園
農地法の許可必要不要(促進計画で設定)不要(特例)
相談先農業委員会市町村・農業委員会市町村・農園の開設者
面積制限なし(下限も撤廃)制限なし10a未満
期間契約による原則10年(短縮は5年まで)5年以内
費用の目安10a年5千円〜2万円台同左+機構により手数料年5千円未満が約5割
営利目的不可
向く人地元に貸し手のあてがある人本気で就農する人自分で食べる分を作りたい人

Amazonで「培養土 野菜」を見る(PR)

借りた区画の土がやせているとき、最初の一年だけは市販の培養土や堆肥で底上げすると、収穫の手応えがまるで違う。最初の成功体験は、想像以上に効く。何を植えるか迷ったら初心者でも失敗しにくい野菜10選から選んでほしい。しゃがむのがつらい人には高設栽培という手もある。

借りてから効いてくる、4つの落とし穴

制度を通っても、揉めるときは揉める。現場で聞いてきた話と、公的資料に書かれている注意点を突き合わせて、4つに絞った。

① 口約束と、無許可の又貸し

いちばん多い。「隣のじいさんが、好きに使っていいと言ってくれた」——これで数年耕し、代替わりや相続を機に返せと言われる。許可を受けていない貸借は無効なので、法的に主張できるものが何もない。

さらに気をつけたいのが又貸し(転貸)だ。農地法3条の許可は、所有権の移転だけでなく賃借権や使用貸借による権利の設定・移転にもかかる。つまり借りた農地を別の人に貸すのも、あらためて許可が要る。「知り合いに手伝ってもらう」つもりが、実態として又貸しになっていた、というケースは避けたい。作業を手伝ってもらうのと、権利を渡すのは別の話だ。

② 「タダで借りる」の弱点

前に触れた無償貸借(使用貸借)の話に戻る。ありがたい申し出だが、借り手の保護は明らかに弱くなる

農地の賃貸借は、農地法第18条によって解除・解約・更新拒絶に原則として許可が必要とされ、簡単には切れないよう守られている。新潟県の説明には「契約期限が到来しても両者による解約の合意がない限り、原則として賃貸借は解約されない」とある。借り手にとっては相当に強い盾だ。

ところが使用貸借(無償)は、この解約制限の例外とされている。年5千円を惜しんでタダで借りると、土を作り上げた3年目に「やっぱり返して」と言われても、抗弁が難しい。私は、少額でもきちんと賃料を払う契約を勧める。金額の問題ではなく、関係を対等にしておくためだ。

③ 原状回復——建てたものは、自費で壊す

「せっかくだからビニールハウスを建てよう」「物置を置こう」。ここも要注意だ。

農林水産省のQ&Aは、農地バンクを通じて借りた農地に農業用施設を設置する場合について、機構と出し手の同意が必要であり、契約終了時には自らの負担で撤去・原状回復が必要と明記している。3条許可による賃貸借でも、契約で原状回復を定めるのが通例だ。

返すときの費用まで含めて、初期投資を考える。ハウス1棟を建てるということは、いつかそれを自費で壊すということでもある。

④ 水と道と、共同作業

制度書類に出てこないのに、いちばん効いてくるのがこれだ。田畑の水は、たいてい地域の水利組合や土地改良区が管理する用水から来る。使うなら参加や負担金が発生することがあり、水路の清掃当番や草刈りといった共同作業も付いてくる。契約前に「水はどこから来ますか」「共同作業は年に何回ありますか」と聞く。聞かなければ、誰も教えてくれないまま契約日が来る。

そして草刈りは、借りた農地の最初の仕事になることが多い。刈払機は、最初の一台こそ慎重に選びたい。

Amazonで「充電式 草刈機」を見る(PR)

選び方は草刈り棚|刈払機の選び方と金属刃・ナイロンコードの使い分けに、地域とのつき合い方は定年帰農で失敗しないために|地域になじむ「3年」の心得にまとめてある。畑の隣に住むところから考えるなら、農地付き空き家の探し方も併せて読んでほしい。

さんぼう君の現場メモ:貸したい人は、必ずいる

飼料と資材の代理店営業で13年、農家の庭先を回ってきて、確信していることがある。貸したい人は、必ずいるということだ。

農地価格が31年下がり続けている理由の第1位が「買い手の減少」だという数字は、裏返せば手放したい人のほうが多いということでもある。高山市の公表データで、田を無償で貸している筆数が有償を上回っているのも同じ話だ。値段を取るより、荒らさずに耕してもらえるほうがありがたい——そう考えている所有者は、確実にいる。

それなのに出会えないのは、畑が看板を出さないからだ。だから探す側が、役所の窓口に顔を出し、名前と目的を伝えておくしかない。地域計画の目標地図に載せてもらうというのは、要するに「この人が耕します」と地域の地図に名前を書いてもらうこと。制度の言葉は堅いが、やっていることは昔から変わらない。

実家の親を見ていても思う。畑に出るのは収穫のためだけじゃない。道で会って、寄合で話して、順番で溝を掃除する。その積み重ねが「困ったときに助けてもらえる関係」になっている。農地を借りるというのは、土を借りることであり、その輪に入れてもらうことでもある。

だから焦らなくていい。市民農園で1年やってみて、それでも足りなければ1反を借りればいい。マイペースでいこう。

よくある質問(FAQ)

Q. 農地は個人でも借りられますか?

借りられます。ただし農地法3条の許可(農業委員会)を受けるか、農地中間管理機構(農地バンク)を通す必要があります。許可には、借りる農地を含めすべての農地を効率的に耕作すること、農作業に常時従事すること、周辺の農地利用に支障がないこと、という要件があります。また、開設者が10a未満・非営利・5年以内という条件で貸し付ける市民農園なら、利用者側に農地法の許可は要りません。

Q. 農家でなくても、資格がなくても借りられますか?

農業の資格は必要ありません。農地法3条に「資格」の要件はなく、問われるのは実際に耕すかどうかです。2023年4月に下限面積要件が廃止されたため、面積の下限そのものはなくなりました。ただし効率利用・常時従事の要件は残るため、規模の妥当性が問われることはあります。ただし農地バンクのルートは、認定農業者・認定新規就農者といった地域の担い手が対象とされることが多く、趣味の菜園目的では通りにくいのが実情です。

Q. 「利用権設定」で借りたいのですが、今もできますか?

新規にはできません。市町村が相対契約に基づいて作っていた農用地利用集積計画は、2025年(令和7年)4月に廃止され、農地の貸借は農地中間管理事業に一本化されました。すでに設定済みの利用権は、契約期間の満了日まで有効です。農地法3条許可による貸借は引き続き利用できます。古い解説ページが残っているので、日付を確認してください。

Q. 農地を借りる相場はいくらですか?

全国一律の相場表はありません。農地法第52条に基づき、各市町村の農業委員会が「農地の賃借料情報」を毎年公表しています。実例では、10a当たり年額で新潟県長岡市の田が13,800〜20,000円・畑5,300円(令和7年度分)、さいたま市の田5,600円・畑8,200円(令和7年締結分)、岐阜県高山市の田2,100円・畑4,000円(令和7年中・無償を0円として算入した平均)。同じ市の中でも地域によって数倍違ううえ、無償の貸借を平均に入れるかどうかも市町村で異なるため、必ず借りたい市町村の公表資料を確認してください。

Q. 週末だけ通う借り方でも、許可は下りますか?

難しい場合があります。3条許可には「農作業に常時従事する」という要件があり、農林水産省の資料では原則年間150日以上とされています。通いの頻度で要件を満たせるかは、その地域の農業委員会の判断です。週末だけの利用が前提なら、市民農園を選ぶほうが確実で早いと考えてください。

Q. 市民農園と、農地を借りるのは何が違いますか?

市民農園は特定農地貸付法などの特例により、10a未満・営利目的でない・5年以内という条件で農地法の許可なしに貸し付けられる仕組みです。区画は50㎡未満が約8割、利用料は年5千円未満が約5割。一方、農地を借りる(3条許可・農地バンク)のは農業を営むための権利設定で、面積の上限はなく、売って収入を得ることもできます。目的が違えば、選ぶ制度も変わります。

Q. どこに相談すればいいですか?

借りたい農地がある市町村の農業委員会です。農地バンク経由を考える場合も、農林水産省は市町村または農業委員会への相談を案内しています。あわせて、市町村の農政担当に「地域計画に位置づけてもらうには何が必要か」を聞いておくと、その後の話が早く進みます。

まとめ──買う前に、借りてみる

  • 農地は個人でも借りられる。ただし借りるときも農地法3条の許可が要る。無許可の貸借は無効で、罰則もある
  • 2025年4月に「利用権設定」(農用地利用集積計画)は廃止。今のルートは①農地法3条 ②農地バンク ③市民農園の3つ
  • 賃料は10a当たり年5千円〜2万円台。買えば同じ広さで100万円前後。相場は農業委員会の賃借料情報で確認する
  • 農地バンクのカギは応募用紙ではなく地域計画の目標地図に載ること。窓口は市町村・農業委員会
  • 自分で食べる野菜が目的なら市民農園が最短。全国4,273農園、年5千円未満が約5割
  • 落とし穴は口約束・又貸し・無償貸借・原状回復、そして水と共同作業

土は買わずとも借りられる。ただし借り方には掟がある。掟を先に知って順番どおりに動けば、来年の春には自分の畝に立てる。

まずは今週、借りたい市町村の名前と「農地 賃借料情報」で検索して、その土地の値段を見てみてほしい。そこから先は、マイペースでいい。

参考・出典

すべて2026年8月26日にアクセスして内容を確認した。

※申請の締切日・標準処理期間・賃借料の水準は市町村ごとに異なります。全国一律の基準はないので、必ず該当の農業委員会でご確認ください。

あわせて読みたい

─ 産地直送・目利き保証 ─

🏮 さんぼう君の新鮮市場

現場を知る大将が「間違いない肉と野菜」だけを並べました。肉のふるさと納税・お取り寄せ・野菜定期便 →


─ さんぼう君よりひとこと ─

この記事は、和牛農家の息子としての経験と、飼料営業として全国の現場で見聞きしたことに基づいています。 個別の経営判断は、必ず担当の税理士・士業・JA・農業委員会等にご相談ください。

この記事を書いた人

さんぼう君

和牛繁殖農家・野菜農家の息子。実家の「売り先が限られている/やり方次第でもっと稼げるはず」 という課題を追ううちに、畜産・農業経営の知識を深く積み上げてきました。 現場で学んだ「リアルな農業経営」を、業界外の人にもわかる言葉でお伝えしています。

→ さんぼう君について詳しく